「琵琶湖疏水が国宝に」日本遺産認定&「ビワマス」は新種の魚と判明しました。日本一の琵琶湖にまつわるビッグニュースです。
https://www.pref.shiga.lg.jp/kensei/koho/e-shinbun/oshirase/344912.html
今回は、京都と大津を結ぶ琵琶湖疏水の建造物の美しさと機能性を取材しました。
琵琶湖から流れる「水」を交通とエネルギーに活用した明治時代の技術の高さと先見性は重厚な「国宝」です。
※写真提供は滋賀県文化スポーツ部文化財保護課
「県境を跨ぐ国宝の指定は初めてではないでしょうか。土木構造物が国宝指定されるのは熊本の通潤橋(つうじゅんきょう:1854年白糸台地に水を送るために作られた石造アーチ橋)についで二例目です」と滋賀県文化スポーツ部文化財保護課建造物第一係主任技師の坪田叡伴(つぼたえばん)さん。
琵琶湖疏水の一部施設が明治時代以降の土木構造物としては初めて、国宝に指定されました。
具体的には第一隧道、第二隧道、第三隧道、インクライン、南禅寺水路閣の5つの施設です。これらは琵琶湖の水を京都に引き、舟運や灌漑、水力発電などに利用するための疏水施設の一部です。明治時代の京都の復興に大きく貢献し、現在も京都市民の生活を支える重要な施設です。
文化審議会は、琵琶湖疏水施設を「明治日本の都市基盤施設の金字塔」と評価しました。文化史的意義も深いそうです。
坪田さんに大津市側の見どころを教えてもらいました。
「大津の見どころは、琵琶湖から一直線に伸びて堀割りの斜面に桜が植えられている風景です。明治時代の美意識が感じられます。三井寺の観音堂から見下ろすと一直線に水が臨める風景は圧巻です。琵琶湖疏水の魅力の一つは当時、高度な技術を用いた建造物が今も残されていることです。大津閘門(こうもん)は水位差がある琵琶湖と疏水の間に船を通すために設けられた施設です。石とレンガでできている閘門を琵琶湖疏水船から見ると重厚なつくりに驚かされます。大津閘門の下流側に続く大津運河は、建設当時の雰囲気が残っており、舟運が盛んだったころの名残で両脇には曳舟道があります。かつてはロープを人力で引き船を大津へ戻していました。大津運河の先には今回国宝に指定される予定の第一隧道があります。トンネルの出入り口には屋根をつけるなど装飾が施され伊藤博文氏などの明治の元勳をはじめとする先人たちの扁額(石に文字を掘り込んだ額)が見られます。大津側は文字を掘り下げた陰刻、京都側は文字が浮き出でる陽刻で、デザインに趣向が凝らされています。また技術的な面では、建設時に山の両側から堀り進むほか、山の上からも垂直に穴を掘り、穴の両側から掘り進めて工期を早める“竪坑(たてこう)方式“を日本で初めて採用しました。現在も第一隧道の真上の山中には第一竪坑が残っています」。
滋賀県庁の敷地内には、日本の建築家で海軍関連や建築、地方庁関連の建築工事を数多く手がけ、琵琶湖疏水の隧道出入り口のデザインに携わった、小原益知(おはらますとも)氏設計の旧庁舎の柱頭飾りが残っています。
明治天皇がおいでになった頃の清澄な景色が琵琶湖疏水に残っているのも見どころの一つです。
京都と滋賀県大津市を結ぶ琵琶湖疏水は、暮らしの重要なインフラでした。現在も「琵琶湖疏水観光船」に乗船するとその美しさが楽しめます。第一隧道の扁額やトンネルの内部、そしてたくさんの石の多くは近江八幡の沖島で採石され船で運ばれたとも伝えられます。当時の足跡を見ることで新たな琵琶湖疏水の魅力が発見できるかも・・・。
明治時代の先達が生み出した、“革新のパワーと伝統を重んじる重厚な品格“に触れることで新時代のヒントを得られるかもしれません。
併せて「ビワマス」が新種の魚であることが判明し、学名「オンコリンカス・ビワエンシス」がつきました。
ともに古きをたずねて新しきを知る“温故知新“なお知らせです。
琵琶湖のありがたさがまたひとつ深まりました。
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#滋賀県文化スポーツ部文化財保護課
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#琵琶湖疏水記念館
1956年大阪市生まれ。滋賀県野洲市在住。(特非)コミュニテイ・アーキテクト近江環人ネットワーク理事長。
写真家の辻村耕司の妻。職業は編集者。一男一女を授かり夫の実家滋賀県の旧中主(ちゅうず)町にて三世代同居。
環境倫理雑誌M・O・H(もう)通信(2003~2016)編集長を務めた。
好きな言葉は「信頼と優愛」。
目標は“びわ湖からつながりのバタフライエフェクト”を創ること。
特徴は夫を「ダーリン」と呼ぶ。現在は夫と猫の六兵衛の3人家族。
先代猫の太郎を交えた『にゃんこといっしょ』(2023)自費出版。
1957年滋賀県生まれ。野洲市在住、(公益財団法人)日本写真家協会(JPS)会員。
1990年に滋賀にUターン後『湖国再発見』をテーマに琵琶湖周辺の風景や祭礼などを撮影。