お知らせ
2024.11.13

【しがライターReport】「小さな自然再生」現地研修会 ビワマス魚道を設置し地域を盛り上げよう+ゲリラ炊飯もあるよ

滋賀県の最北端、長浜市西浅井町を流れる大浦川。秋には多くのビワマスが遡上し産卵しますが、途中の堰から上流への遡上が難しくなっています。
この研修会では、「小さな自然再生」研究会と日本河川・流域再生ネットワーク、西浅井を農業から盛り上げる若者集団「ONE SLASH」さんとともに仮設魚道の仕上げに取り組みました。

滋賀県琵琶湖環境科学研究センター、公益財団法人リバーフロント研究所の協力のもと庄農業者トレーニングセンターに集合しました。
地元の協力も得られ長浜市長浅見宣義氏も駆けつけました。
当日は『雨ニモマケズ風ニモマケズ』ビワマスの遡上を助ける作業をしました。
「楽しかった」「大人の川遊び」といいながら川床の砂を土嚢に詰め積んで魚道を固定、魚道の仕切りに切り込みを入れてお手入れ完了。

ビワマスの産卵が増えますように願いよ届け。
ゲリラ炊飯も体験。東京で人気の品種いのちの壱(1kg3,000円)とコシヒカリの食べ比べに舌鼓を打ちながら地域を盛り上げる情報交換をしました。

ビワマス跳ねれど堰は越えれず

  1. 落差が高いラバー堰
  2. 手順を説明する佐藤祐一さん

ビワマスは、サケ目サケ科に属する淡水魚。琵琶湖にのみ生息する固有亜種です。産卵期には大雨の日に群れをなして河川を遡上することからアメノイオ(雨の魚)と呼ばれています。
ビワマスの身は柔らかく脂ものりトロッとした滋味で“琵琶湖の宝石“と称賛されています。
保存に適さないことから“足の早い魚“と言われ近辺での消費にとどまっていました。
琵琶湖から長いときには数十キロも遡上し命を繋ぐ旅に出る美しい魚です。

大浦川も高い落差の堰があり湖魚の上流への遡上を妨げています。
研修会では禁漁期間(11月30日まで)の大雨の日、事前に設置された木製の仮設魚道に魚の通り道をつける作業をしました。

小さな自然再生の実践、落差1.2mのラバー堰に手づくり魚道を設置

  1. 胴長姿でスコップ、土嚢袋を手にした参加者がザックザックと砂を袋に入れます
  2. 土嚢をブルーシートに積み上げると「アーラ不思議」魚道の上の水流が止まります
  3. 「ノコギリしたい人」ギコギコと切り目を入れて切り口を広げます

琵琶湖から3.5kmの距離、落差約1.2mの取水堰に仮設魚道を設置しました。
現地技術指導は岩瀬晴夫さん(株式会社北海道技術コンサルタント)、田原大輔さん(福井県立大学)、佐藤祐一さん(琵琶湖環境科学研究センター)です。

「ビワマスは側線で流速を見て早い流れを察知します。堰があると流れの最も早い箇所を目掛けジャンプし遡上します。魚道の流れが早くない場合は流速の早い方を目指します。堰の下に魚のたまるところがあればジャンプしやすいのですがここはないので魚道が必要です」(岩佐さん)。
佐藤さんの指導で土嚢を積んで水流を止め、魚道の仕切り板に穿たれた板の中央に魚が通れるように切り口を拡大します。
魚道を固定したあと、魚道の上に置いた土嚢を撤去すると川の水が勢いよく流れ込みます。
これで魚道は完成です。

水流を戻すと川の流れが同一になり魚道は水の中。
「ビワマスがジャンプしてくれるかな?」期待が膨らみます

自然素材の土嚢でつくるバーブ工

  1. RICE IS COMEDYのマイクロバス
  2. 川の流れを確認、奥に庄農業者トレーニングセンターの建物
  3. 移動中、よく働きました

RICE IS COMEDYマイクロバスで移動します。
琵琶湖から2.9kmの場所に設置されたバーブ工設置現場を見学しました。
バーブ工は、河岸から上流側に向けて突き出した形をしており、河川の水勢を緩和します。また流れの方向を整えるために水中に設ける工作物です。川の流れに運ばれてくる砂を留めて寄り洲を形成する河川工法です。

「環境に配慮して土嚢袋は天然素材の麻製を使用しています」と佐藤さん。

RICE IS COMEDYは、「おもしろい米作り」を目指して琵琶湖の最北端で活動する20~30代の西浅井町をルーツにもつメンバーです。
“地域の魅力は農業だった。米作りは喜劇だ“をコンセプトに世界一おもしろい米作りを発信しています。

パッカーン!!ゲリラ炊飯かまどで4升飯炊けた!

  1. パッカーン!の儀式
  2. いのちの壱(右)、コシヒカリ(左)、お講汁
  3. ONE SLASHの清水さん

昼食はONE SLASHさんのゲリラ炊飯です。
いのちの壱とコシヒカリを2升ずつお釜で炊きます。
“パッカーン!の儀式“で蓋をあけてみんなで炊き上がりを祝います。
薪で炊かれたごはんはふっくらとした旨み。
塩加減が絶妙のおにぎりにゴマの入ったお講汁は絶妙の味わい。
お話も弾みます。

「川の水を採取して環境DNAの研究をしています。季節ごとに分析すると川の中に生息する魚種がわかります。今の時期はビワマスのDNAが多く見られますよ」と長浜バイオ大学の原口さん。
「河川改修工事の際魚道の必要性を土木関係者の方に周知しておくことが必要ですね」
「爬虫類も生息しやすい多様な自然環境を保全し人にも生き物にも安全な河川改修を望みます」
ビワマスの魚道設置とゲリラ炊飯によるおにぎりとお講汁。
冷たい雨の中の作業でしたが達成感は大きい一日でした。

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#公益財団法人リバーフロント研究所
#滋賀県琵琶湖環境科学研究センター http://jp.arr.net/jp/activity/publication/

E-mail : info@a-rr.net
Website : http:/www.a-rr.net/jp/
Facebook : www.facebook.com/JapanRRN
#コミュニティアーキテクト

レポーター紹介

文/辻村琴美・文化コーディネーター

1956年大阪市生まれ。野洲市在住。(特非)コミュニテイ・アーキテクト近江環人ネットワーク理事長。
写真家の辻村耕司の妻。職業は編集者。一男一女を授かり夫の実家旧中主(ちゅうず)町にて三世代同居。
環境倫理雑誌M・O・Hもう通信編集長を務めた。好きな言葉は「信頼と優愛」。目標は“びわ湖から世界に羽ばたくバタフライエフェクト”を創ること。

写真/辻村耕司・滋賀を旅する写真家

1957年滋賀県生まれ。野洲市在住、(公益財団法人)日本写真家協会(JPS)会員。
1990年に滋賀にUターン後『湖国再発見』をテーマに琵琶湖周辺の風景や祭礼などを撮影。

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