現在、滋賀県立美術館内の「Lab」で漁師体験をした芸術家の作品展「BIWAKOアーティスト・イン・レジデンス漁師と芸術家-なみとしまのあわいで-」が開催中です。それぞれの芸術家が感じ、表現した琵琶湖を見ることができます。
会場に展示されているのは、画家の植田陽貴さん、劇作家の杉本奈月/N2さん、刺しゅう作家のPomZyquita(ポムジキータ)さん、立体作家の「犬人のに(いぬなのに)」さんの4人の作品。
植田さんは風の強い日に漁船で沖に出た時の記憶を「波の間、風の声」というタイトルの3枚組の油絵で表現。
杉本さんは「琵琶湖の夜の色」を表現した板の上にタテボシ貝の貝殻を乗せ、スピーカーをつなげ、貝殻を通して出る音の波形をプロジェクターで映し出す作品「無響室」を作りました。「貝の声なき声を聞く」作品です。
PomZyquitaさんの作品はビーズ刺しゅう作品と油絵で琵琶湖を表現した「湖底伝説」。
「犬人のに」さんは新聞紙で作ったビワコオオナマズやビワマスを出品しています。
「BIWAKOアーティスト・イン・レジデンス」は、琵琶湖の漁師、駒井健也さんと版画家の松元悠さんが始めたプロジェクトで、毎年、芸術家が琵琶湖で漁師体験を行って作品を作り展示しています。
きっかけは2020年。松元さんが琵琶湖の漁に興味を持ち、駒井さんの漁を手伝い、リトグラフ作品「里湖源五郎鮒物語」を制作したこと。
「ほかにも漁師体験をして作品を作りたい人がいるかもしれない」と、2022年からマザーレイクゴールズ(MLGs)推進委員会と共に一般に参加者を募ることに。
最初は日帰り体験だったのですが、「早朝の漁体験をしてもらいたい」と、2023年から1泊2日に。今年は芸術準備室ハイセンの協力を得て、長期滞在できる場所を用意。実際、PomZyquitaさんは約1カ月滞在して作品を制作したそうです。
2022年に参加した版画家の武雄文子さんは、琵琶湖で1000年以上受け継がれている伝統漁法「エリ漁」に魅力を感じ、作品を作り続けています。
武雄さんは「琵琶湖から突き出た杭は、自然に受け入れられている雰囲気を醸し出しているが、明らかに人工物なのが面白い。夜明け前、漁の船に乗ると、真っ暗な琵琶湖に不安になるが、夜が明け始めると、エリの黒いシルエットが見えて、自分の立ち位置がはっきりする。私にとってのエリの存在を作品にしている。エリ漁は描き続けたいモチーフ」と話します。
滋賀県立美術館のポップアップギャラリーには、武雄さんが作り続けたエリ漁をモチーフとした作品を展示しています。
武雄さんは運営として関わり、現在はプロジェクト代表を務めています。
武雄さんは「琵琶湖の漁という同じ経験をした人から、全く違う作品が生まれてくるのが面白い」と話します。
漁師の駒井さんは「湖の原風景を残したいという漁師の思いと、琵琶湖の仕事を体験して生まれる作品を作りたいという芸術家の思いから始まった。作品を通して琵琶湖ならではの漁業、暮らしなどを感じてもらえたら」と呼びかけます。
2月1日には太陽光で写真をプリントするワークショップ「光で描く琵琶湖~サイアノタイプ体験」を、2月2日には駒井さんと作家4人のトークセッションを行います。
「BIWAKOアーティスト・イン・レジデンス漁師と芸術家-なみとしまのあわいで-」
https://www.instagram.com/biwako.artist_in_residence
2025年1月21日(火)~2月2日(日)
9時30分~17時(最終日は16時まで)
滋賀県立美術館 Lab、ポップアップギャラリー
滋賀県大津市瀬田南大萱町1740-1
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