琵琶湖博物館が7年ぶりに国の天然記念物に指定されている絶滅危惧種のアユモドキの人工繁殖に成功しました!琵琶湖博物館で生まれたアユモドキの幼魚は現在、同博物館で見ることができます。
アユモドキはコイ目アユモドキ科の淡水魚で、泳ぐ姿がアユに似ていることからアユモドキと名付けられましたが、アユとは全く別の魚です。
京都府亀岡市の一部と岡山県の一部にしか生息しておらず、環境省のレッドリストカテゴリーで最も絶滅のリスクが高いとされる「絶滅危惧IA類」に指定され、国内希少野生動植物、国指定の天然記念物にも指定されています。日本で最も絶滅のおそれが高い淡水魚の一つとされています。
滋賀県では、琵琶湖博物館水族展示室の前身である琵琶湖文化館の時代から40年以上にわたって、現地ではすでに絶滅している京都府南丹市(旧八木町)の個体を系統保存してきましたが、2017年以降、繁殖に成功していませんでした。
昨年、飼育しているアユモドキを調べたところ、メスがいないことが判明。淀川水系アユモドキ生息域外保全検討委員会と環境省との協議の上、南丹市のアユモドキと同一水系に生息し、遺伝的に非常に近い亀岡市のアユモドキのメスを採集し、人工繁殖に挑みました。
すると、5月27日に7年ぶりに人工繁殖に成功。最終的に南丹市のアユモドキのオスと亀岡市のメスから約1000匹の稚魚が誕生したそうです。
同館学芸員の田畑諒一さんは「今回の人工繁殖成功により、南丹市の遺伝子をつなぐことができました」と安堵します。
現在は3センチほどに成長したアユモドキの幼魚約30匹が琵琶湖博物館の保護増殖センター前で飼育展示されています。
シマシマの体でちょこちょこ泳ぐアユモドキの幼魚たちはかわいいですよ。
今回のトピック展示では、アユモドキの幼魚とともに、琵琶湖で1992(平成4)年に捕獲されたアユモドキの標本も展示しています。
田畑さんは「かつては琵琶湖にもいましたが、1992年を最後に発見されておらず、おそらく絶滅したと思われます。琵琶湖にもアユモドキが生息していたことを知ってもらうために標本を展示しています」と話します。
アユモドキは川が氾濫した時に「氾濫原」で卵を産み、ミジンコなどを食べて育ちます。氾濫原には外敵が少なく、エサが豊富なことから氾濫原を選んでいるようです。
しかし、川が氾濫しないように治水が進み、さらに田のほ場整備が進んだことにより、アユモドキは繁殖場所を失いました。
琵琶湖博物館の「よみがえれ!日本の淡水魚」コーナーには、常設展示としてアユモドキの成魚が飼育展示されていますが、生育環境に近い展示にするため、氾濫原を再現しているそうです。
人間が安全に暮らすためには必要な治水。治水によって生息場所を失うアユモドキ。
かわいいアユモドキの姿を見て、生き物たちと人間の共存について考える機会になりました。
アユモドキ幼魚の展示は12月24日までです。
琵琶湖博物館
草津市下物町1091
TEL::077-568-4811
開館時間:9時30分~17時(最終入館 16時)
休館日:毎週月曜日(祝日の場合は開館)
入館料:大人=800円、高校生・大学生=450円、中学生以下無料。
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