「早崎内湖ビオトープ」は、干拓農地の一部を湛水して動植物の調査を行っている、日本最大のビオトープ実験地です。長浜市早崎町では、昭和39年頃から食糧増産のため内湖を埋め立てて干拓田が作られましたが、現在では豊かな自然を取り戻すため、干拓田を元の内湖に戻そうとする動きが進んでいます。平成13年に試験的に調査が始まり、内湖再生の可能性が探られてきました。
そもそも「内湖」とはいったい何なのでしょうか?琵琶湖沿岸では、本来は琵琶湖の一部であった水域が、土砂の堆積などによって琵琶湖から隔てられることがあります。このように琵琶湖湖岸の内(陸)側に生じた池、沼、沢などの総称が内湖です。内湖は全体で琵琶湖の面積のわずか0.6%にすぎませんが、ヨシなどの抽水植物が琵琶湖全体の約60%も生育していて、在来魚の重要な産卵・繁殖場になっています。水質浄化機能によって琵琶湖への直接的な影響を緩和したり、農業用水に使われたり、溜まった底泥や水草が肥料に使われたりなど、私たちの暮らしとも密接に関わってきました。人は内湖のこのような機能を生活に役立て、内湖は適度に人の手が加わることでその環境を保つ、まさに人と里山のような関係であり、内湖は”里湖”とも呼ばれることがあります。
ただ、内湖は里に近いうえに水深も浅く、簡単に陸地化できるという特徴もあり、干拓や埋め立てなどで次々と消失していきました。その結果、生物多様性の低下などの様々な影響が現れ、内湖の必要性が改めて見直されることとなりました。
ビオトープ実験調査がはじまってからはコハクチョウが年々増え、現在では滋賀県で有数の飛来地となっています。またハスの群生地としても有名で、ピンク色の美しい花がビオトープに彩りをそえます。ビオトープはドイツ語で「地域の野生生物の生息空間」という意味。琵琶湖の生態系を守り、人々の暮らしを支える、”里湖”の姿がまた見られるようになることを願います。
写真提供:(公社)びわこビジターズビューロー