琵琶湖固有種のニゴロブナで作られる発酵食品「フナ寿司」。
魚を塩とご飯とを使い発酵させた“なれずし”の一種で、強い酸味と塩気、クセのある独特な香りが特徴的です。
ご飯のおかずとしてはもちろん、お酒を飲まれる方にはとくに人気です!
通常フナ寿司は、発酵のための乳酸菌が活発に働く夏場に漬け込まれます。
ですが江戸時代前期の書物には、「江州フナの鮨は寒の内に漬け申し候」、つまり「冬の寒い時期に漬けこむ」という記述が…!
そこで琵琶湖博物館の橋本道範学芸員は、この記述を確かめようと、今年1月の寒い時期に、大学教授やフナ寿司づくりのプロの皆さんとともに、出来栄えを確かめる実験を行われました。
それから120日経った、先月29日。
塩加減を変えてフナを漬けた、2つの樽を開ける日がきました。
開けてみると…どちらの樽も漬かり具合は浅め。
全体的に生っぽく発酵が弱いとのこと。
やはり寒さで発酵が遅いようです。
ですが味は「美味しい、上手くナレている」と好評!
このことを受け橋本学芸員は、「冬場の寒い時期のフナ、通称”寒ブナ”がとても美味しくて、それを江戸時代の人々は商品化したのではないか」と仮説を立てられました。
寒い時期のフナは刺身も楽しめる「寒ブナ」と呼ばれ、身が一年で最も美味しいとされます。
江戸時代の人たちは、この美味しさを好んだのかもしれません。
一方現在では、フナ寿司といえば、黄色い卵がぎっしり詰まったものが一番人気です。
フナの産卵期は4月頃なので、下ごしらえを終えて漬け込むのは夏の初め頃になります。
漬け込み時期の違いは、それぞれの時代の人々の好みによるもの、というのが橋本学芸員の説です。
橋本学芸員は実験を続け、冬に漬けた樽を、次回は180日目となる2か月後に開けることにされています。
「琵琶湖博物館では色々な企画展や交流事業が行われるので、そこで県民の皆さんと一緒に、なぜ江戸時代の人々が冬場に漬けるのか一緒に考えていきたい」とのこと。
冬に漬けたフナ寿司、これからどんな漬かり具合になっていくのか楽しみですね。