近年、問題となっている琵琶湖の水草。船のスクリューに絡まり、悪臭を放つ水草は厄介者なのだと思っていましたが、果たして水草は厄介者なのでしょうか?
水草について考える企画展「湖底探検II-水中の草原を追う-」が現在、琵琶湖博物館で開催中です。
近年、琵琶湖の南湖では水草が繁茂し、船が航行や漁業に影響が出ています。
水草が切れて流れ、湖岸に漂着すると腐って悪臭を放ちます。特にコカナダモは自ら根を切って漂流し、コカナダモの流れ藻は、大きなマットのようになることもあります。
琵琶湖の湖面に立つ鳥。実は、鳥は湖岸に流れ着いた水草の上に立っているのです。
水草が増えると、湖底付近の水草は光合成できなくなり、水中の酸素が減り、低酸素状態になりシジミが減少する原因にもなっています。
ここまで読んで、「やっぱり、水草はいらない」と思った人も多いと思います。
実は、悪影響だけではないのです。
一般的には、水草が増えると、競争相手である植物プランクトンが減り、水が透明になるといわれています。水草があると波が静かになり、土砂が沈みやすくなり、水の透明度が上がります。
水草の表面には様々な生き物が住み着き、エサ場や隠れ場として利用します。コイやフナは水草を産卵の場として利用し、生まれた稚魚も水草帯をエサ場や隠れ場として利用します。
今は増えすぎて問題になっている水草ですが、1960年代から1990年代初めまで、南湖の水草は消滅の危機にありました。
富栄養化によって植物プランクトンが異常に増えて水が濁り、光が湖底まで届く範囲が限られていたため、水草が生息できる場所が極端に減っていたのです。
1980年に制定された富栄養化防止条例や、その後の下水道の普及などにより、湖に流れ込む富栄養化物質(窒素やリン)が減少し、1990年代半ば以降は植物プランクトンが減少します。
植物プランクトンが減り、透明度が上がったことから水草が増加傾向になりました。
つまり、水草が増えるということは、水質が改善したという証なのです。
琵琶湖博物館の展示では、琵琶湖の湖底を撮影した映像や、水草の種類などとともに、南湖で水草が大量発生した原因や、滋賀県が取り組んでいる水草の刈り取り作業と刈り取った水草の活用法、琵琶湖周辺に暮らす人々が水草とどのように関わってきたかを紹介しています。
万葉集にも「玉藻刈る」と詠まれており、奈良時代には琵琶湖で「藻取り(水草刈り)」が行われていたと推測され、江戸時代には琵琶湖の藻取りの境界線を巡って裁判が行われていたとの記載も残ります。藻取りの縄張り争いで命を落とすこともあったそうです。
刈り取った水草は田畑の肥料として使われ、昔の人にとって水草は貴重な資源だったのです。
展示の最後には、琵琶湖博物館からのメッセージがあります。
「水草があるのとないのとどちらが良い環境なのでしょうか」
「直ちに答えがでることではないでしょう。私たちが考え、話し合い、時間をかけて答えを探していくべき課題なのだろうと思います」
善か悪かではなく、琵琶湖の環境を守り、共生していくために、水草について学んでみませんか?
11月24日まで企画展示室で開催しています。
草津市下物町1091
TEL::077-568-4811
開館時間:9時30分 ~17時(最終入館 16時)
休館日:毎週月曜日(祝日の場合は開館)
入館料:大人=800円、高校生・大学生=450円、中学生以下無料。
「湖底探検II」企画展示観覧料:大人=300円、大学生・高校生=240円、中学・小学生=150円。