琵琶湖から唯一流れ出る瀬田川のほとり、六万三千坪の丘陵地に広がる「寿長生の郷(すないのさと)」は和菓子の「叶 匠壽庵(かのうしょうじゅあん)」が“農工ひとつ”の菓子作りの理想を求める里山です。梅や柚子などなどが植えられた敷地には自然の谷川や山林をいかした遊歩道があり四季折々に数百種類の野の花が咲き誇ります。日本の原風景に抱かれた里山で味わう手作りの和菓子やお茶、旬の食材を盛り込んだ懐石料理が魅力的。
今回は、日台里山交流会議の視察を控え、30by30(サーティ・バイ・サーティ)自然共生サイト(2030年までに陸と海の生態系の30%を健全に保全する生物多様性に取組む地域)に認定されている叶 匠壽庵・寿長生の郷で、いきもの研究室の河合嗣生さんが生物多様性と人の暮らしを考える「おとなの虫観察会」を始められたので参加しました。
叶 匠壽庵の丹澤愛継(あつき)さんと細谷さんが同行です。
河合さんは、ランドスケープデザイン・アトリエ風を主宰する環境計画・環境教育のスペシャリスト。登録ランドスケープアーキテクトで環境カウンセラーでプロジェクトワイルドのエデュケーターです。
まずは昆虫の体のつくり→虫の名前の約束→生物多様性と斑紋・色彩・形の多様性→美しさの裏にあるものをレクチャー。
鳥をはじめとする捕食者から身を守るために毒性を持つ虫に擬態し、多様な斑紋が生まれたかも。
標本やゴキブリの図鑑、イモムシの図鑑・・・も閲覧しました。
気になったのは、ゴキブリ。頭の形から、御器噛(ゴキカブリ)と呼ばれていたのに、Cockroachの日本訳にゴキ(カ)ブリと誤記されてゴキブリになったとか。
すごい誤記ブリね(笑)。
お散歩しているとフワフワと視線を横切る虫たち。「あ、これはダイミョウセセリ。近くにヤマイモが生えてるでしょう。ホシミスジ、翅の付け根に小さな星のような斑紋があるんです。幼虫はユキヤナギを食べ、葉先に小さな棲家を作ります。これはオジロアシナガゾウムシ」と手に乗せてくれます。河合さんの説明が楽しい。
「ほら、シジュウカラが鳴いてます」まるで寿長生の郷とお話ししているみたい。
本日出会った生き物たち、ダイミョウセセリ(ヤマイモ)、イチモンジセセリ(ススキ)、ホシミスジ(ユキヤナギ)、モンキアゲハ(ミカン)、ツバメシジミ(ヌスビトハギ)、キタキチョウ(ネムノキ)、ナミアゲハ(ミカン)、ホシホウジャク(スズメガの1種)、チュウゴクアミガサハゴロモ、オジロアシナガゾウムシ、カジカガエル、クチベニマイマイ、シジュウカラ、ミツバチ。
植物は、ミヤマヨメナ、ヤブツルアズキ、セッコク、カヤラン、ヤブツバキ、シラヤマギク、ヤブラン、ヒシと滋賀県では希少種のオケラ。
盛りだくさんでした。自然の営みが健全に育まれているのですね。
叶 匠壽庵・野の花課長で樹木医の丹澤愛継さんに寿長生の郷を案内していただきました(野の花課って可愛い)。
「ぼてじゃこと呼び親しまれてきたイチモンジタナゴは1990年代に激減し環境省のレッドリスト絶滅危惧ⅠA類に位置付けられ、滋賀県では指定希少野生動植物として採取禁止となっています。そこで、ぼてじゃこの産卵床となる二枚貝のドブガイや、ドブガイの子供を育てるヨシノボリなども守るため、市民団体ぼてじゃこトラストさんや琵琶湖博物館さんと協力し、ぼてじゃこ池と命名しました」(丹澤さん)
郷に流れる小川は、山の水を菓子作りに使った後の工場排水を浄化処理し、再び郷の細流に戻すなど、自然を保全するための工夫がされています。滋賀県では希少種の植物オケラも咲いています。鹿垣(シシガキ)も残っています。
「自然と文化に敬意を表した観音様も随所にあります。滋賀の自然と文化を愛した創業者の言葉『花は親しい仏さま』を形にした野の花観音様です。この土地で受け継がれてきた自然と命を守ることが生物多様性につながると思います」(丹澤さん)
富士山から琵琶湖に運ばれた石に描かれた観音様が虫と戯れているようでした。
大人の虫観察会@寿長生の郷は、年4回開催の予定です。次回は冬でしょうか、虫たちはどうしてるのかな?楽しみです。
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日本と台湾のつながりを踏まえて、里山に象徴される自然を活かした、持続可能な地域社会づくりを学び合うために視察、シンポジウムを開催。
2024年10月6日に近江八幡市・ヴォーリズ学園・ハイド記念館で開催されます。
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#30by30アライアンス
https://policies.env.go.jp/nature/biodiversity/30by30alliance/
#コミュニティアーキテクト
1956年大阪市生まれ。野洲市在住。(特非)コミュニテイ・アーキテクト近江環人ネットワーク理事長。
写真家の辻村耕司の妻。職業は編集者。一男一女を授かり夫の実家旧中主(ちゅうず)町にて三世代同居。
環境倫理雑誌M・O・Hもう通信編集長を務めた。好きな言葉は「信頼と優愛」。目標は“びわ湖から世界に羽ばたくバタフライエフェクト”を創ること。
1957年滋賀県生まれ。野洲市在住、(公益財団法人)日本写真家協会(JPS)会員。
1990年に滋賀にUターン後『湖国再発見』をテーマに琵琶湖周辺の風景や祭礼などを撮影。