「大津市埋蔵文化財調査センターに行ったら4500年前のセタシジミもらえるって知ってる?」ってダーリンがポツリと。
「えっ!よくテレビで映ってる貝塚にあるやつ?」と私。
「ほれ」と渡されたのは、紛れもない(って知らんけど)湖底遺跡で有名な粟津貝塚から発掘された本物のセタシジミ(と説明がついている)。
「なんか使えそうやん。白くて大ぶりで、見てみ、年齢じわ(貝の表面に沿って見える隆起線)が20本まで見えるわ。きれいなあ」。
貝殻の表面はザラっとしていて、裏面はなめらか。一つひとつ違う模様が見える…。と、気にしていたのが数年前。やっと大津の埋蔵文化財調査センターに行きました。
「石山貝塚のはぎ取り遺物があります。貝塚周辺には人骨が出土していて、煮炊きした痕跡も残っています。人がいて食して生活をしていた場なんですよ」と、長年発掘に携わってきた田中さんが教えてくれました。
「大津市歴史博物館で『土の中っておもしろい!企画展発掘された大津の歴史』にも当センターの遺物を多数展示したんですよ」と情報もゲット。
残念ながら会期は終了しているので図録を紹介します。古墳の副葬品がカワイイの。時代別に遺物が見れるので歴史の移り変わりもわかります。
大津市には、約400ヶ所におよぶ遺跡(埋蔵文化財包蔵地)の存在が知られています。地下に眠る遺跡の記録保存のため必要に応じて発掘調査されました。それらは埋蔵文化財調査センターで整理し保存しています。センターでは遺跡紹介展や学習の参考になる体験教室も開催していて、多くの市民の皆さんが利用されています。はぎ取り貝塚が迫力あります。
「琵琶湖があったので、貝類が豊富に生息していたんですね。縄文時代から琵琶湖が人の生活に欠かせない命の源だったんですね」と調査員さん。確かに、4500年前の粟津貝塚のセタシジミはしっかりしていて背も高い(貝の接続部分の盛り上がり)。太鼓塚遺跡(大津市滋賀里1丁目と高砂町)では古墳時代の横穴式石室から出土した副葬品として、土器の「ミニチュア炊飯具」がセットで供えられていました。これが可愛いのです。実際の炊飯具としては小さく実用品ではないのですがお米を蒸す道具の竈(かまど)・釜(かま)・甑(こしき)と鍋(なべ)が組み合わさっているのです。「大陸や朝鮮半島から日本へ移住してきた渡来(とらい)人の文化を反映していると見ています。専門の職人が作った特注品で未使用品です」と、説明を受けると想像が止まりません。
琵琶湖の波打ち際でシジミ狩りをして、琵琶湖の水で砂抜きをして、竈に火をつけ鍋にシジミを入れて、薬味の植物を入れて汁にしたのかなあ?美味しかったろうなあ、縄文時代のしじみ汁。集落のみんながたくさん食べて貝殻を1ヶ所にまとめていたのね。それが貝塚なのね。湖が人を育んでいたのね。と、ぼーっとひとりタイムスリップしてしまいました。
※調査員のおすすめの逸品 №340《滋賀をてらした珠玉の逸品⑰》ミニチュア炊飯具ー渡来系集団を示すアイテム(大津市嶽古墳)ー
https://00m.in/HhXWH
「土器に触れるんですよ」。エッ!これ?本物?。なんか土器だけにドキドキ。時代別にシールが貼られています。古墳時代のこれは半分割れているけれど…
「これはお酒を入れて注ぐものと思われます。穴が空いていてそこに竹を刺して傾けるんです。うまい具合に縦半分に割れた状態で出土したので内部がわかります」。
お銚子のようなものかな。土器は壊れそうなものという先入観があったのですが、がっしりとした質感で落ち着いた色合いでズッシリ重い。土を叩いている跡が模様になっている土器も。平安時代のお皿もあって、陶芸家の作品を愛でているよう。割れていても存在感を感じます。
古墳の副葬品の中には滋賀里遺跡(湖西線の建設に伴い関連遺跡発掘調査)で平成3年に縄文時代晩期の土坑墓(どこうぼ)16基、17体の人骨が検出され注目を集めました。遺物としては縄文土器、石斧(せきふ)、石錘(せきすい)などの石器、翡翠(ひすい)製の勾玉(まがたま)が出土しています。
時に装飾品が出土すると「その人がどんな風に大事にされていたのかを想像することができます」。水晶の耳飾りや、首飾りやカンザシなど丁寧に上品で、それらを見ていると、なんか作れるんちゃう?と好奇心がムラムラと…。まずは、来館記念にいただいた縄文時代のセタシジミの貝殻と琵琶湖の石を使ってオブジェを作ってみましょうか?
縄文時代は『芸術は爆発だ!by 岡本太郎』なのかしら。信楽も近いことですし、繋がりを感じます。
大津市埋蔵文化財調査センターにお越しください。調査員の方の生の声も聞けるかもしれません。とてもフレンドリーで親しみやすい空間です。展示物を見て土器に触れてインスピレーション感じてください。
#大津市埋蔵文化財調査センター
大津市滋賀里1丁目17-23 電話077-527-1170
「〈遺跡紹介展〉埋文センター周辺の遺跡」2023年7月18日~10月13日 9:00~17:00(土曜・日曜・祝日は休館)
#「発掘された大津の歴史」図録
発行:大津市歴史博物館、1,000円
https://www.rekihaku.otsu.shiga.jp/goods/
1956年大阪市生まれ。野洲市在住。(特非)コミュニテイ・アーキテクト近江環人ネットワーク理事長。
写真家の辻村耕司の妻。職業は編集者。一男一女を授かり夫の実家旧中主(ちゅうず)町にて三世代同居。
環境倫理雑誌M・O・Hもう通信編集長を務めた。好きな言葉は「信頼と優愛」。
1957年滋賀県生まれ、日本写真家協会(JPS)会員。
大学から大阪で暮らし1990年にUターン。
1993年から写真撮影を生業とする、滋賀を旅する写真家。