【しがライターReport】「ビワコツボカムリ」って?琵琶湖のプランクトン、103年を経て再記載

2021-9-8
海と日本PROJECT  in 滋賀県

琵琶湖の固有種といえば、ビワコオオナマズ、ビワマス、ビワヨシノボリなどがありますが、小さな小さなプランクトンにも琵琶湖の固有種がいます。
1918年から103年の時を超え、2021年8月に「ビワコツボカムリ」が再記載されました。
「ビワコツボカムリ」とは?本当に琵琶湖の固有種なの?その謎に迫ります。

 

「ビワコツボカムリ」って?

殻の長さが0.24~0.38㎜の有殻アメーバで、細長い一本の角を持ち、開口部は漏斗状に広がり、その縁は多少波打つという特徴的な殻を持つ「ビワコツボカムリ」。
1960年代には、琵琶湖のプランクトンの優占種となっていて、多く生存していましたが、琵琶湖の底質環境の変化などにより、1970年代から個体数が減少しました。
生きた個体は1981年10月に見つかったのを最後に発見されていません。
2005年には滋賀県版のレッドデータブックに絶滅危惧種として掲載されました。
日本全国の淡水湖沼の調査からも琵琶湖以外ではみつからず、琵琶湖の固有種と考えられていましたが、21世紀になってから、中国のキアンダオ湖、ポヤン湖、ムーラン湖でも「ビワコツボカムリ」が発見されたとの記録があり、琵琶湖の固有種ではないといわれるようになりました。

 

「ビワコツボカムリ」は琵琶湖の固有種?

そもそも、琵琶湖の固有種かどうかは、どうやって判断するのでしょうか?
類似した個体が発見されたときには、「タイプ標本」に指定された標本と比較して同じ種か別の種かを判断します。
「ビワコツボカムリ」は、1918年に川村多実二博士によって簡単なスケッチによって記載されましたが、学名の基準として指定された標本であるホロタイプ標本を欠いていました。
滋賀県琵琶湖環境科学研究センターの一瀬諭研究員は「100年以上前に新種記載されましたが、タイプ標本はなく、ビワコツボカムリは幻の生物でした。博物館に現物がない状態が長く続いていたことが問題でしたが、学術誌に投稿してもなかなか受理してもらえなかったのです」と振り返ります。
ホロタイプ標本が失われている場合に、新たに選び直され、再記載されるタイプ標本が「ネオタイプ標本」です。
法政大学の島野智之教授と、滋賀県琵琶湖環境科学研究センターの一瀬研究員を中心とする研究グループが、1961年8月15日に滋賀県水産試験場が採取した「ビワコツボカムリ」のホルマリン固定標本をもとに作成したプレパラート標本を新たにネオタイプ標本に指定し、当時行われていなかった電子顕微鏡観察や統計的解析を加えた論文を投稿し、8月6日、学術誌「Species Diversity」に記載されたことによって、国際動物命名規約に基づいて「ビワコツボカムリ」のネオタイプが指定されました。
「ビワコツボカムリ」のネオタイプ標本は国立科学博物館に収蔵され、証拠標本は国立科学博物館と琵琶湖博物館に収蔵されました。
こうして、103年の時を経て、「ビワコツボカムリ」の動物分類学的に不安定な状態が解消されました。

ネオタイプ標本とムーラン湖で発見された「ビワコツボカムリ」とされる個体について形態計測に基づいた統計的解析によって精査して、別の種類であると確認され、改めて「ビワコツボカムリ」が琵琶湖の固有種である可能性が示されました。
さらに研究を続け、真の琵琶湖固有種かどうかについて検討を続けるとのことです。

川村博士が学名を付けたときに「ビワコツボカムリ」という和名を付けましたが、その後、図鑑などに掲載されるときに転記ミスで「コ」の文字が抜け、「ビワツボカムリ」という和名に変わってしまいました。
今回の再記載を機に、初記載時に用いられた「ビワコツボカムリ」を和名として使うことを改めて提案しました。

一瀬研究員は「国立科学博物館に収蔵したことで、ビワコツボカムリの標本が永久に残ります。40年間琵琶湖のプランクトンを研究してきて、役に立てたことがうれしい」と話します。
「ビワコツボカムリ」は、長くその姿を確認されていませんが、小さなプランクトンに思いをはせてみませんか?

滋賀県琵琶湖環境科学研究センターHP

 

レポーター紹介

有限会社ウエスト
子育て応援マガジン「ピースマム」をはじめとするフリーペーパーを手掛けるなど、滋賀県のことを知り尽くす「有限会社ウエスト」さんとコラボレーション!
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