五月は爽やかな季節。田んぼでは田植えが始まっています。
田植えの時期、田んぼから流れる濁った水は川に流れ琵琶湖に入るため、内湖が水を濾過する役割を果たしていました。
第2次世界大戦、戦後の食料増産政策により内湖は埋め立てられました。
田んぼをうるおす溜め池は各地に残っていますが、今では琵琶湖からの揚水が田んぼに引かれています。
田んぼには水が満たされさながら水鏡(みずかがみ)のように空が水面に映し出されます。
そうそう、今は圃場整備(ほじょうせいび)が進んでいてバルブを捻れば水を田んぼに張ることができます。
時にはエビも一緒に田んぼに流れます。
だけど昔はどうだったんでしょう?
田んぼに沿って川が流れているんです。
田んぼに近い川から水を入れます。
えっ?どうやって?
それはね、あなたも作ったことがあるでしょう?水車を使います。
足こぎの水車(みずぐるま)です。
ギッコンギッコンゆっくりと川の水を田んぼに流します。
時には魚が一緒に入ります。
フナ、コイ、ナマズ、タナゴ、ハスなどなど。
産卵を控えたナマズなどは川を遡って田んぼにたどり着きます。
そう、ナマズは田んぼで産卵します。
卵をお腹に蓄えたメスのお腹をオスが体ごとハチマキみたいに巻きつかせて産卵を手伝います。
そう!田んぼは魚の赤ちゃんのゆりかごなんです。
田んぼではカエルや昆虫、カメ、鳥など多くの生き物が暮らしています。
イネにつく害虫もいますが多くのムシは食物連鎖で生き物によって捕獲されます。
農薬を使わない減農法でイネを育てる農家さんが増えています。
生き物の赤ちゃんのゆりかごになっている水田だから「魚のゆりかご水田」。
写真は琵琶湖の南部野洲市須原のゆりかご水田の田植えです。
魚道を作り魚の遡上を助けます。
こちらでは田んぼオーナー制があり、オーナーになったら田植えや稲刈りができます。
ファミリーで田植えに駆けつけました。
京阪神から多くのオーナーさんが契約しています。
コロナの影響で久しぶりの再開です。泥んこになって楽しそう。
吹き渡る風は湿っぽかったり爽やかだったり6月の天気は入梅前の移り気な空模様。
ツバメも子育て中、餌になる昆虫を求め飛び回ります。
田んぼには稚魚の餌になるプランクトンが多いので、魚たちは元気に大きくなります。
田んぼが健康な証拠。イネもすくすく育ち美味しくなります。
「魚のゆりかご水田米」というブランドを店頭で見たことありますか?
ゆっくり大きくなりますように。
願いを込めて苗を田んぼに植え付けます。
親指と人差し指と中指で美味しくなあれとつぶやきながら。
田植えの作業は人と自然と生き物が織りなす梅雨入りへのセレモニーと言えるかもしれません。
美味しい米は豊かな土と水と魚たち、生き物たちと人の暮らしが育みます。
#魚のゆりかご水田
1956年大阪市生まれ。(特非)コミュニテイ・アーキテクト近江環人ネットワーク理事長。写真家の辻村耕司の妻。
職業は編集者。一男一女を授かり夫の実家旧中主(ちゅうず)町にて三世代同居。
環境倫理雑誌M・O・Hもう通信編集長を務める。好きな言葉は「信頼と優愛」。
1957年滋賀県生まれ。