【しがライターReport】森の名手名人太々野氏の弟子 荒井恵梨子さん発見!ー山の暮らしと小原かご展ー

2023-8-7
海と日本PROJECT  in 滋賀県

琵琶湖から大阪湾へと流れる高時川源流の村に伝わる小原(おはら)かごの継承者あらわる、と風の便りが届きました。何処からか「小原かご」の書籍が手元に。
SNSでは、きのもと交遊館で『山の暮らしと小原かご展』を開催するよおとお知らせが来ています。
おやおや、これは時代が動いたな。
今から10年ほど前『もったいない・おかげさま・ほどほどにが環境と人間を育てるM・0・H(もう)通信』を発行していたおりにご紹介したのが、太々野(ただの)さん(87才)でした。イタヤカエデの若木を主原料材料にした小原かごは、人の手が入った山と、山の恵みを生活の糧にした人々の暮らしを象徴する伝統技術です。
山が健全に機能すると、水の流れも滞らず山の恵みの水が川から里にも好影響を与えます。
山の暮らしから遠のいた私ができることはなんだろう?ずーっと気にかけていました。
そこに荒井恵梨子(35才)さんが登場。師匠の技と知恵と記憶を継承してくれます。

 

研究者の荒井さん湖北地方で太々野さんに出会う

  1. 豊かな自然に囲まれた小さな村落だった小原村の航空写真『M・O・H通信2014/9/20』太々野さん提供
  2. ニウジがあった家の間取りのスケッチ『M・O・H通信2014/9/20』太々野さん提供
  3. 道具を手作りするスケッチ『M・O・H通信2014/9/20』太々野さん提供

“先憂後楽”太々野師匠の座右の銘です。先を憂いて後は楽しく。きっと楽しそうに弟子の荒井さんに話しかけているのでしょうね。
荒井さんは2018年長浜市木之本町に移住しました。金沢大学大学院で山間部村の生活道具の技術や文化の継承について調査研究しています。小原かごの太々野さんとは2017年秋に出会いました。
「山の暮らしの体現者だと実感しました。当事者として継承に関わりたいという思いで小原かごつくりを習い、奥丹生谷の小原村にも入りました。半鐘の柱だけが残っています。太々野さんから聞く山の暮らしは私にとっていつも新鮮で、違う世界の話のようです」。
小原村は1995年離村、小原かごや炭窯で焼いた炭を売ることで暮らしを支えていました(小原区文書1780より)。
太々野さんは一子相伝とも言われた小原かごを見ようみまねで会得し現在に技術を伝えています。
2022年これまで小原かごを習った数名の有志が、小原かご研究会「きつつき」を設立しました。

 

『自然と神々と暮らした人々の民具 小原かご』2023年5月能美舎より出版

  1. 「木かごづくりは、山と生きる暮らしそのものなのです」東京文化財研究所今石みぎわ(帯より)
  2. 自作のナタかごを身につけ山に入る荒井さん
  3. とても難しいハゼつくり 写真:辻田新也

「私が最初に出会ったかごは、ぜにかごです」60年ほど前、商店の店先にゴム紐でぶら下げられていた小さなかごです。商品代金がそこに入れられお釣りもそこから渡されました。お客さんは買い物かごを手にがま口を握り締め買い物をしていました。商品は新聞紙で包まれ買い物かごの中へ。現在は過剰包装を削減していますが、昭和のエコな暮らしに小原かごは欠かせない容器でした。太々野さんからのメッセージは「ものを大事に使ってもらいたいということです。今は使い捨ての商品が多くなってきています。古くてもそこに価値を見出して、ものを大切に使って欲しいと思います」(M・O・H通信45号2014年)。
荒井さんが出会った小原かごが、それを伝えたのかもしれません。
2023年5月に能美舎から上梓した『自然と神々と暮らした人々の民具 小原かご』を読むと、木かごつくりは山と生きる暮らしそのものですという言葉が実感できます。木かごの色とフォルムと手触りが自然の美を象徴していると感じます。
荒井さんは「太々野さんのところに行くといつも新しいものが作られているのに驚きます。自身の体にあった道具や日用品の工夫が新しいんです」。
小原かごも現在の暮らしに合わせて昔の民具から、おしゃれな日用品に生まれ変わっているものもあります。

 

小原かごつくり実演&対談があるよ『山の暮らしと小原かご展』8月19日

  1. 作り手太々野師匠と弟子荒井さん 写真:浅井千穂
  2. 『山の暮らしと小原かご展』チラシ
  3. 山暮らしのクリエイター太々野師匠が笑顔で物語る

「山暮らしはたくましいと思うんですよ。湖北地方は住めば住むほど面白い発見があります。地域おこし協力隊時代に家庭栽培のお茶調査をしました。湖北地域は茶産地ではありませんが自家消費の釜炒り道具が残っています。茶を煎る鉄製のフライパンが、太々野さんいわく風呂釜を再利用したものとか。湖北地方は日本の歴史の層が厚いので、語れる文化を生活道具から発見したいと思っています」。
小原かごをつくりながら師匠が語り伝えています。弟子は耳を傾けて記録しています。師匠と弟子のやりとりが聞けるチャンスがありますよ。
『山の暮らしと小原かご展』が8月11日から27日、きのもと交遊館で開催されます。太々野さんと荒井さんによる小原かごつくり実演と対談は8月19日。
同日は湖北山のマルシェもあります。きのもとぶらりん実行委員会による企画です。

 

滞在型民泊施設フナヤマリサーチハウスは義祖母の町屋

  1. 扉を開けると吹き抜けの広い土間
  2. 2階が寝室

長浜市には暮らしの文化が多く残っています。大学の研究機関やゼミで使ってもらえるように、長期滞在型民泊施設フナヤマリサーチハウスをオープンしました。場所は長浜駅から徒歩10分。米川が流れる成田美術館の並びです。吹き抜けの土間が開放的な8名収容の町家です。築130年ほどのお家。階段箪笥や長持ちなど古き良き住まいです。研究も進みそう。素泊まり、連泊、一棟貸しでリーズナブルな価格設定になるそうです。名称の由来は推してしるべしかな?

 

ライフワーク「語れる湖北の文化を見つける」

  1. 小原かごは山育てから。どなたかイタヤカエデやリョウブが育つ山を紹介してください

「手近にイタヤカエデの樹齢15年程度のまっすぐな木がないのですよ。小原かごは山育てからと言われます。山を育てたい。いつか山が欲しいです」。小原かご作りに危機が迫っています。原料となるイタヤカエデ、モミジ、リョウブを育てる山が必要です。

荒井さんのライフワーク湖北地域の調査研究「語れる湖北の文化を見つける」ために、小原かごつくり継承、調査研究、論文、山育て、事業とやることリストが連なります。

フナヤマリサーチハウス

カフェと日用品 コマイテイ
木之本駅から徒歩7分、「湖北の暮らしをもっと楽しく、もっと豊かに」をキーワードに、湖北の暮らしに欲しい日用品を扱っています。

#Researcher、Product Planner 荒井恵梨子
#www.kei-fu.com
#カフェと日用品コマイテイ
#フナヤマリサーチハウス
#自然と神々と暮らした人々の民具小原かご
#能美舎
#山の暮らしと小原かご展8月11日から27日
#小原かご作り実演対談8月19日
#湖北山のマルシェ8月19日
#きのもと交遊館
#きのもとぶらりん実行委員会
#国土緑化推進機構 山の名手・名人 太々野功(つとむ)
#滋賀のカメラマン辻村耕司
#コミュニテイアーキテクト辻村琴美
#M•O•H通信45号「人」恩顧地心2014

 

レポーター紹介

文/辻村琴美・文化コーディネーター
1956年大阪市生まれ。野洲市在住。(特非)コミュニテイ・アーキテクト近江環人ネットワーク理事長。
写真家の辻村耕司の妻。職業は編集者。一男一女を授かり夫の実家旧中主(ちゅうず)町にて三世代同居。
環境倫理雑誌M・O・Hもう通信編集長を務めた。好きな言葉は「信頼と優愛」。
写真/辻村耕司
1957年滋賀県生まれ、日本写真家協会(JPS)会員。
大学から大阪で暮らし1990年にUターン。
1993年から写真撮影を生業とする、滋賀を旅する写真家。
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